『教育虐待・教育ネグレクト』
という言葉をご存知ですか。
これは古荘純一氏と磯崎祐介氏が2015年に発行した著書、
『教育虐待・教育ネグレクト~日本の教育システムと親が抱える問題~』
の中の言葉です。
虐待というと、心理的虐待や身体的虐待などがパッと思い浮かぶかと思います。
が、
・少子化で子どもが少なくなっているからこそ、過度の期待を込めたり・・・
・グローバル化・国際社会化など、どんな世の中になっていくのか分からないからこそ、子どもの教育に熱が入りすぎてしまったり・・・
・自分が苦労した分、子どもには苦労してほしくない、という想いが強すぎてしまったり・・・
など、「教育虐待」は今の日本で確実に起きています。
2016年の夏には、中学受験の勉強を巡り、父親が小学校6年生の息子を刺殺するというショッキングな事件も起きており、始まった裁判の行方が注目されています。
我が子を想い、愛する想いが我が子にとっては恐怖となる。
そんな悲しいことにならないようにするためには、どうすればいいのでしょう。
一番の対策は、親・大人が教育虐待についてしっかり学ぶことです。
目次
教育虐待とは、一般的に言われる虐待と違って、子どもに危害を加えようとして行うものではありません。
子どもを愛しているがゆえに、大切に想うがゆえに起きてしまうものです。
誰もが我が子には、”〇〇になって欲しい”という想いがありますよね。
・自分で生活できる能力が身に付くように
・将来立派な人になれるように
・大きくなって困らないように
などなど、”子どものため!”と思うからこそ、親自身も頑張っていくことができますよね。
しかし、その親の頑張り=熱心さが、過度の期待へと変化し、かえって子どもを苦しめることにもなるのです。
分かりやすい具体例を紹介すると、
・あなたのためなのよ!と勉強や習い事強要する
・お前の将来のためだ!○○では将来ろくな大人にならないぞ!など、結果や成果を求める
・可愛い我が子のために!と子どもの行動を細かく把握する(友人関係や学校での様子など)
などの行動が、「教育虐待」となるのです。
こんなにあからさまなことはしていない!と思うかもしれませんが、
子どもの気持ちを聞かずに親の気持ちを押し付ける
先回りしてなんでも整えてしまう
うちの子はこんな子と決め付けている(思い込んでしまっている)
などのことも、教育虐待に繋がる可能性があります。
より教育虐待をイメージしやすいのは、ドラマなどで描かれる、
「教育熱心な親が子どもに知らず知らずのうちに負担をかけている」
というシーン。
前述したように、それはノンフィクションの世界だけではなく、残念ながら現実でも起こりうることなのです。
私がインターナショナルスクールで勤務していた時にも、似たような場面が見られていました。
明らかにインターナショナルスクールよりも、母国語での環境の方が子どものために良いと専門家が判断しても、親自身がそれを認められない。
・インターナショナルスクールにいることが子どものためになる
・親自身が苦労したから、今子どもに頑張らせれば将来は苦労しない
と信じて疑わないからです。
※インターナショナルスクールに子どもを通わせていることがステータスになっている場合もあります。
それで子どもが苦しんでいても、気付けない・認められないのです。
これはなにも、インターナショナルスクールだけに見られることではありません。
教育虐待はどこでもだれでも起こりうる可能性があることなのです。
教育虐待の他にも、子どもを潰してしまう行動があります。
それが、メディアでも紹介された、『マルトリートメント』と呼ばれるものです。
マルトリートメントとは、「不適切な養育」という意味。
「教育虐待」という言葉を少しマイルドにしたような言葉、ともいえます。
貴方が我が子のために良かれと思っていることが、不適切な養育=マルトリートメントになってしまっているとしたら・・・
マルトリートメントが恐ろしいのは、子どもの脳を変形させてしまうということ。
では一体、どんなことがマルトリートメントになるかというと・・・
第5位:過干渉
第4位:スマホ育児
第3位:(親が)裸でウロウロする
第2位:兄弟や友達などと比べる
第1位:感情的に怒る、叱る (出典:世界一受けたい授業)
の5つ。
いかがでしょうか。
「え、これも!?」
と思ったこともあったのではないでしょうか。
ぜひ気をつけていきたいですね。
以前メディアでも言っていましたが、子育て・教育においてはいわゆる
「エリートやキャリアウーマン」
と言われる方の方が、ストレスを感じやすい傾向があるのだそうです。
これは12年間、2,000世帯のご家族を見てきた経験からも同じ傾向があるといえます。
なぜなら、
・自分はできるのに、子どもができないことが理解できない
・私の子ならできて当然
・私の子なら、こんなことができるはず
などという想いがあるからです。
例え同じDNAを持っていても、子どもは親とは違う一人の人間。
教育虐待に陥らないためにも、このことはしっかりと心得ておかなくてはいけません。
・子どものためにはこれが必要!
・この子はこれが好きだからきっとこの才能があるに違いない!
・その子はこういう性格だから私がしっかりしないと!
愛する子どものため、親は一生懸命です。
そしてその一生懸命な愛情は、子どもにも確実に伝わっています。
だからこそ、子どもは親の愛情に応えようと一生懸命です。
たとえそれが、自分にとって苦しいものであっても、親の期待に応えようと必死です。
なぜなら、愛されたいから。
子どものため、と貴方も頑張っているのに、それが結果的に子どもを苦しめていることになっているのだとしたら・・・
こんなに皮肉なことはありませんよね。
我が子が持つ本来の可能性を、見逃すどころか潰してしまっているのかもしれないのです。
もし、「子どもに愛情を注いでいるのになんだか上手くいっていない気がする」と感じた時には、フッと一歩引いて、子どもを観てみてください。
子どもを客観的に観てみると、色んな姿が見えてきます。
これまで気にしてきたことが、実はそんなに気にしなくても良いことだと気づくなど、自分自身も俯瞰して観ることができるようにもなります。
物を見るのに近すぎるとピントが合わずにぼやけてしまうように、子どもに近づきすぎるとお互いの姿がぼやけて見えなくなってしまいます。
お互いの姿をクリアに見るためには、適度な距離が必要不可欠。
子どもを愛するあまり、心配するあまりに近づきすぎるのではなく、子どもは自分とは違う人間だと認め、子どもを信じて離れてあげることも必要なのです。
そしてそのためには、親自身が自分の人生を楽しむことも大切。
自分の人生を楽しむことができないと、子どもを身代わりにしたり、想いを押し付けやすくなってしまい、教育虐待や子どもの幸せを潰してしまうことに繋がってしまうからです。
親が本当に子どもに望むことは、学歴や成績ではなく、『子どもの幸せ』ですよね。
子どもは親の背中を見て育ちます。
親が人生って楽しい!幸せ!という背中を見せることが、子どもの生きることへの希望、幸せに繋がっていきます。
親として立派でいなくちゃ!と365日24時間、気を張る必要はありません。
ストレスや迷い、悩みを感じたら、すぐに吐き出してしまいましょう!
子ども&貴方の可能性は無限大!
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