カリフォルニアの園で約10年、23か国の子どもたちを担任してきたNさんとのインタビュー、『海外の幼児教育を知る』。
vol.3の今回は「行事」についてお伺いしました。
※過去2回の記事はこちら↓
「海外の幼児教育を知る vol.1~カリフォルニアの現場から~」
「海外の幼児教育を知る vol.2~カリフォルニアの現場から~」
せかいく(以下せ):向こうでは、どのような行事があるのですか?
Nさん:1番大きなイベントと言えば、『アートショー』ですね。
せ:アートショー?
Nさん:はい。アートショーとは、1年に1回あるイベントで、「子どもが作った絵や作品を保護者がオークションする」というものです。
せ:オークション!なんだかすごそうですね。
Nさん:すごかったですよ。各クラス、グループ作品と個人作品を作るんです。
グループ作品は1個、個人作品は2~3個作ります。
それを親が欲しいものを買うのです。グループ作品は1個2万円くらい、個人作品は1個2000円くらいで売れます。
クラスの思い出スクラップブックは10万円で売れたこともあるんですよ!
せ:10万ですか!?すごいですね~!子どもの作品に値段が付くのもすごいと思いますが・・・
売れ残ったりはしないのですか?
Nさん:ほとんどしないですね。もし売れ残ってしまったら、親が自分の子どもの作品を買うので(笑)
もちろん、買うことは強制ではありませんが、ほとんどの親が何かしらの作品を買っていきます。
せ:それはすごい!作品を作るのは大きいクラスの子どもたち(2~4歳)なのですか?
Nさん:いいえ。全クラスが参加しますので、0歳の子どもの作品もオークションに出されます。
ちなみに、良い園は0歳児でもアートやクッキングを行います。
良い園・悪い園を見分けるポイントはアートだと思っています。
せ:そうなのですね!確かに、アートは園の教育理念を表す指針の1つだと私も思います。
それにしても、アートショーは楽しいイベントですね!せかいくでもぜひやってみたいです!
他の行事はどのようなものがありますか?
Nさん:その他はHalloweenやサンクスギビング、面談くらいですね。
クリスマスはみんながみんなクリスチャンではないので、やらないのです。
せ:そうなんですか!向こうの方がクリスマスは盛大に行うと思っていたので意外ですが、確かに宗教的な意味合いが含まれていますもんね。
せ:アートショーというイベントは、日本ではなかなかないものですが、買う親御さんから何か言われたことはありませんか?
Nさん:特にないですね。向こうは保護者の意識が日本とは全然違うんです。
おかしな言い方ですが、向こうでは、親がどんなに立派な地位・職についていても、『先生』を尊敬しているのです。
それは、保育園の先生に対しても同じです。
『自分の子どもが通っている大事な園・先生・クラスのために何ができるか?』という意識がみんな強いのです。
そのために、寄付がすごかったり、親の方から「クラスのためになにか出来ませんか?」と聞いて来たり、物やお金だけではなく、時間を割いてお手伝いに来てくれたりします。
日本では、『先生』という立場は年々弱い立場に追いやられてしまっているように感じますが、向こうではそんなことはありません。
自分の子どもを見ていてくれる、『先生が1番』という意識があるので、親の態度は日本とは違うと思います。
文句や苦情(?)もほとんど出ません。
せ:なるほど。親の意識に差があるのですね。確かに日本では、教育の場で親のご機嫌を伺うような場面が多く出てきてしまっているように感じます。
本来であれば、園と家庭、両方の面から平等に子どもをサポートしていくべきなのに、日本ではそれが難しくなっているような・・・
Nさん:私もそれは感じています。
また、変な言い方になってしまいますが、向こうで働いていて感じたことは、高学歴の親の方が悠々としているということです。
せかせかしたり、あれこれ言ってくることがないのです。自分の子どもが楽しんで園に通い、先生を好きであれば、それでOKなんです。
全体的にリラックスして子育てをしているように感じますね。
それに対し、アジア系の人たちはせかせかしている印象です。実際に少数ですが、現地で日本人のご家族を見たことがあります。
その時にプレゼントが少し曲がっているのを指摘され、驚いたのを覚えています。
せ:そうなのですね!日本の園では、実に細かいところにまで気を配るので、日本から海外へ行った方は、違いに驚いたのかもしれませんね。
Nさん:そうだと思います。
せ:いろいろとありがとうございます。
最後にもう1つだけよろしいでしょうか?
日本では今後、保育士免許のない方も保育現場で働けるようになるのですが、それについては、海外で幼児教育に携わってきたNさんはどのように思われますか?
Nさんの答えはいかに・・・?
それはまた次回、最終回で!