英語教育への熱が益々過熱している昨今。
「英語教育は耳のよい○歳までのうちに!発音も○歳までにやれば大丈夫!○歳までに英語脳をつくる!早く始めれば母国語と同じレベルになる!」
など、様々な情報がひっきりなしに耳に入ってきますよね。
それ故に、
・早く始めなきゃ!と必要以上に焦る
・この英語教育で本当に良いのかと不安になる
・英語教育(教材含む)の情報がありすぎて取捨選択ができない
などと、英語教育に関して悩みを持つ方が増えています。
「○歳までに!」と言われている年齢の多くは、だいたい6~7歳くらいまで。
あっという間に過ぎてしまう時期だからこそ、余計に焦りを感じてしまいますよね。
では本当に、6~7歳までに英語を始めれば、英語を習得することができるのでしょうか。
今回は
『元インターナショナルスクール保育士が伝える、6歳までの英語とは』
というテーマで、学校法人SEiRYO学園習志野台幼稚園様で行った講演をもとに、6歳までの英語教育について、お伝えいたします。
目次
なぜ今、英語教育が過熱しているのでしょうか。
講演に参加してくださった方に考えていただくと、
・小学校で英語が始まるから
・大学の論文は英語のことが多いから
・英語が世界共通語だから
・これからグローバル社会、国際社会になっていくから
など、様々なご意見が出てきました。
どれもその通り!なご意見なのですがここでのポイントは、
『グローバル社会、国際社会になっていく』
というワード。
そう、日本が「教育改革」を打ち出したのも、英語教育を小学校で取り入れようとしているのも、すべては今後、日本もグローバル化、国際社会になっていくことを想定しての動きです。
政府が今後の動きを見たときに打ち出したことの1つが英語に力をいれること。
だから昨今、どこでも英語英語!と叫ばれるようになったのです。
つまり、英語に取り組む本来の目的は「ただ英語を完璧に身に付ければ良い」というわけではなく、その先にある、
『グローバル化、国際社会で活躍するため』
ということなのです。
「国際社会で活躍するためなら、やはり英語は早くから始めたほうが有利なのでは?」
と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
本来の目的(ゴールとも言える)は『国際社会での活躍』です。
私がインターナショナルスクールに勤めていた時、
・うちは英語さえ話せるようになればそれでいいんです
・うちの子の英語力はどうですか?
と英語力ばかり気にする保護者の方にたくさん出会いましたが、
英語力さえあれば、国際社会で本当に活躍することができるのでしょうか。
英語力があることが、国際社会での活躍に直結するのでしょうか。
6歳までに育てるべき優先順位第一位って英語力なのでしょうか。
これも、参加者の方に考えてもらったところ、
・まずはコミュニケーションできるようにするべきだと思う
・これからはいろんな人と関わる時代だからこそ、それぞれの違いを認めた上で、関われる人になることが大切だと思う
・「日本人として」がないとだめだと思う。まずは国語力が大切だと思う
・親が愛情をたっぷり注ぐことが大切だと思う
など、実にすばらしいご意見がたくさん出てきました。
そうなのです。
”英語は早いうちからやらないと!これからの時代には英語が必須!”
などという言葉を聞くとどうしても、英語力さえあればこれから来る国際社会で活躍できるんだ!と思い込んでしまう(思い込まされてしまう)のですが、「英語力=国際社会での活躍」には繋がらないのです。
英語力があれば国際社会で活躍できるのなら、英語を母国語とする人はすべて国際社会で活躍できる人である、ということになります。そんなことはありませんよね。
実は本来の目的(ゴール)である国際社会で活躍できる人になるために必要なキャリアとは、英語力ではなく以下の6つなのです。
①コミュニケーション力
②マナー・礼儀
③多様性を知る・楽しむ
④自国を知る(母国語力)
⑤自己肯定感
⑥自分で考え、行動できる(問題を解決できる)
これらのキャリアを合わせて「人間力」と言うこともできます。
人間力がなくては、いくら英語が堪能でも国際社会で活躍することはできません。
「英語力があるだけの者よりも、英語力がなくてもいいから人間力のある者がほしい。
英語は後からいくらでも身に付けることができるが、人間力は幼い頃からの積み重ねであり、一朝一夕には身に付かないものだからだ。」
これは海外にて経営コンサルをしている方、経営者などにインタビューをさせていただいた時にいただいた言葉です。皆一様に同じことをおっしゃっていました。
人間の核・土台となる「人間力」を一番育てるのは乳幼児期、つまり6歳までです。
(もちろんその先も育っていきますが、一番育つ大事な時期は6歳までだと考えています。)
この時期に、英語という目に見える成果よりも、人間力という目には見えづらい成果をこそ、重要視すべきなのがこの言葉からも分かります。
では6歳までは英語教育をしない方がいいのか?
英語教育にメリットはないのか?
と思われるかもしれませんが、そんなことはありませんし、英語教育を否定するわけではありません。
ただし、6歳までに”読む・書く・聞く・話すの4技能を習得させることを目的”に、英語に向き合わせるのは決してオススメしません。
なぜなら、子どもがやらされている感や親からのプレッシャーを感じ、英語嫌いになる可能性がぐんと高まるからです。
が、上記6つの中の③、
「多様性を知る・楽しめる
(つまり、自分とは違う文化を持つ人、自分とは違う目の色、髪の色、肌の色をしている人を怖れない、偏見を持たない、違いを理解することを楽しめる)」
ようになるためのツール(道具)として向き合わせればメリットはたくさんあります。
6歳までは木に例えると、根っこを育てる大切な時期です。
そして英語力とは根っこではなく、葉の部分。
本来根っこを育てる時期に葉を一生懸命育てても、全てを支える根には栄養も力もないので、すぐに倒れてしまいます。
目には見えない根っこを太く、丈夫に育てれば、それが葉への栄養に繋がり、豊かな葉が茂るのです。
親が英語に対してどのような心構えでいるのか、が将来の子どもの英語力、ひいては国際社会での活躍にも関係してくるのです。
「教育とは、学校で習ったすべてのことを忘れてしまった後に、それでもなお、自分のなかに残るものをいう。
そして、その力を社会が直面する諸問題の解決に役立たせるべく、自ら考え行動できる人間をつくること、それが教育の目的といえよう。」
これは理論物理学者、アルベルト・アインシュタイン氏の言葉です。
習ったすべてのことを忘れてしまった後に、それでもなお、自分のなかに残るものとは、決して英語力(4技能)ではないはず。
本当は6歳までに育てるべきことは英語力ではないと分かっていても、「子どもに英語を!」というワードがあちこちから聞こえると、本来の目的(国際社会での活躍=人間力を育てること)を忘れ、英語をやらせなきゃ、身に付けさせなきゃ!という思いに駆られてしまう。
ここでも、自己肯定感の低さ(=自分の考えより皆と同じが安心)という今の日本人が持つ問題点が見え隠れしているのです。
6歳までの英語とは、
『あくまでも国際社会で活躍できる力である、”多様性を知る・楽しめる土台”を子どもの中に築くため』
に行うものです。
もし周囲からの声で英語教育への焦りが出た時には、貴方自身に質問してみてください。
①貴方はなぜ、我が子に英語を身に付けてほしいと思うのですか?
②貴方は6歳までの我が子の中に育てるべきこと優先順位第一位は英語だと思いますか?
子ども&貴方の可能性は無限大!
Category ”真の”才能を発掘する方法 . 専門家コラム . 真のグローバル人の育て方 2019.07.08