私の友人に小学校で図書支援をしている方がいます。
その方曰く、
「最近、本を借りる子(=読む子)が減っている」
とのこと。
これは由々しき事態!
なぜなら本を読むことは、
『語彙力・文章力・読解力が身に付く』
ことに繋がるからです。
目次
これは現代日本で本当に切実な問題。
なぜなら、現代では約三割が教科書を読めない(理解できない)まま中学を卒業している、という結果が出ているからです。
読解力不足は大人にも見られ、非機能的識字の方が増えているという結果も出ています。
個人が日常生活において、読み書き計算を機能的に満足に使いこなせない状態を指す。(出典:Wikipedia)
つまり、ひらがなやカタカナ、漢字などの文字を読んだり書いたりはできるが、書かれた内容の理解や活用ができない、ということ。
イタリアではなんと3割の大人がこの状態なんだとか。
参照:「日本の識字の課題は本当に「終わった」のだろうか?―あらためて考えたい機能的非識字のこと」
教科書が読めても理解出来ないということは、当然ながら勉強の仕方が分からないということになります。(教科書に出てくる「定義」が読めない子は小学生だけではなく、中学生、高校生にもいます。)
勉強の仕方が分からなければ勉強に対してマイナスな感情を抱くようになる。
すると、将来AIに仕事を奪われる、または仕事を奪われても他の職につけない、という事態にもなります。
この状態になると、日本社会は労働力不足なのに失業者や非正規雇用者が増えるということが既に予測されています。
実は私も、大人の機能的非識字を目の当たりにした経験がありました。
私は教育現場では主任という立場だったため、よく実習に来た学生や研修生の指導録を見ていました。
そこは、“嘘でしょ!?”と目を疑うような文章のオンパレードだったのです。
小学生で習うはずの国語の文章が書けなかったり、指導しても読解力がないからなのか?何度言っても理解出来ていなかったようで、直すことが出来ないのです。
もちろん、きちんした文章を書き、言われたことをすぐに直せる方もいます。
それでも、えー!?と思う文章を書く方の多いこと、多いこと…
どんなに言語の読み書きが出来ても、読解力がなければ、周囲に「この人大丈夫かな?」と思われてしまい、活躍することが難しくなってしまうのだということを実感した出来事でした。
機能的非識字を回避するために、今、教育業界では子どもの読解力をいかにあげるか、に重点を置いています。
なぜなら、AIに出来ない(AIが弱い部分)が「読解力」だからです。
東大に入学出来るAIロボットの製作を研究していた教育者の研究によると、AIは数学や理科などの科目は得意なものの、国語や英語などの、いわゆる人の気持ちや会話の流れを理解しなくてはいけない問題には弱いということが分かっています。
つまり、このAIが弱い部分が人間の強み。
この部分を向上させていくことで、AIに仕事を奪われない、仮に奪われたとしても、他の場で活躍出来るようになるのです。
そして読解力の向上には教育現場での取り組みも重要ですが、乳幼児期から、
「どれだけ文章としての日本語に触れているか」
が重要なのです。
本(活字)を読む機会の多い方はその分、自然に“文章の書き方や構成”も身に付けています。
と同時に、
・これはどのようなことだろう?
・この言葉の意味はなんだろう?
と考える機会も多くなる。
そのため、読解力のみならず、想像力も自然と身に付けていくことが出来るのです。
文章を読むということは、口語では学べない言語能力を学ぶことになるのです。
そして文章をたくさん読み、読解力をしっかりと身に付けることが出来れば、どんな言語でも理解することが出来ます。
それは何も言葉を流暢に話せる、ということではありません。
人が人を理解するのには、目の前の相手の表情、態度から
「この人、今、こんな気持ちなのかな」
「こんなことがしたいのかな」
と読み取る力が必要です。
読解力がないと、この言語以外でのコミュニケーションの読み取りも難しくなってしまいます。
これでは、世界でどころか自国で活躍することも難しくなってしまいますよね。
だからこそ、読解力を向上させることが世界での活躍へのカギなのです。
そしてそれには”乳幼児期からいかに文章に触れるか”が大切です。
乳幼児期から読解力を!
というとなんだか何をしたら良いのか分からなくなってしまいそうですが、何も専門の教室に通わなくとも、家庭で貴方が簡単にお子様の読解力を向上させるアイテムがあります。
それが『絵本』です。
絵本にはたくさんの種類があり、生まれてすぐに読める絵本から、大人でも楽しめるようなものまで、実にバラエティにとんでいます。
乳幼児期のお子様は、本を“読んでもらう”ことが大好き。
この時期に、本を読むことを一緒に楽しむことが、本を好きになることにも繋がり、読解力にも繋がっていくのです。
ただし!
無理にお子様に自分で読ませようとすることは逆効果。
最近、文字をいかに早く読めるようにするか、早く読める=勉強も出来るようになる、と思っている親御様が増えているようで、お子様の年齢に見合っていない絵本を与える方をよく見かけます。
お子様が楽しんでいるのなら、少し難しいものを与えても良いでしょう。
しかし、3歳のお子様が、小学校の国語で習うような物語を読むのは早すぎます。
実際に、そのお子様に「それ楽しい?」と尋ねたところ、「楽しくない」という答えが返ってきました。
まず大前提に、“読んでもらう”楽しさ、嬉しさを感じなければ、自分で読もうという意識は育ちません。
その上で、好みももちろんありますが、せっかく読もう!と思ったのに、お子様が自分で読むには難しい絵本ばかり並んでいたとしたら…
読めない→自信がなくなる→絵本はつまらない→本を読むことはつまらない
になってしまいます。
結局のところ、“楽しくなければ興味が湧かない”のは大人も子どもも同じです。
文字を読めるようになっても、理解できなくては意味がなかったですよね。
文字が読める→しっかり理解出来る
に移行するには、まずは本を読むって楽しいことなんだ!という意識を育てることが大切だということを、ぜひ意識していてくださいね。
さて、私は本を読もう!と題してここまで記事を書いてきたわけですが…
なにがなんでも一生活字の本を読みなさい!と言っているわけではありません。
かくいう私も、恥ずかしながら、活字の本を再び読み始めたのは社会人になって、本を読むことの楽しさを思い出した、最近になってからです。
子どもの頃から絵本や本は大好きでしたが、小学生になると本に変わるものに興味が移っていました。
それが『漫画』です。
私は漫画が大好きです!
そして、漫画でも読解力はある程度育まれると考えています。
なぜかというと、漫画だって”理解しなくては読めない”からです。
日本の漫画のコマ割は、海外の方にとってはとても難しいそうです。
それを、次にどこのコマへ進めば良いのか考えることなくスムーズに読める日本人は読解力がある!という人もいるくらいです。
また、絵本と同じように、漫画だからこそ入りやすい世界、知れる世界があることも漫画の良い点の1つ。
私も小学生の時に、はだしのゲンや『漫画偉人伝』(正式なタイトルを忘れました)を読み漁りました。
キュリー夫人やショパン、ジャンヌダルクにマザー・テレサ、アンネ・フランク…当時出版されていて、書店に並んでいたのは全て持っていたと言っても過言ではありません。
(もちろん、日本の偉人たちもうちにいましたよ!)
万有引力の法則だの、相対性理論だのは、漫画でなければ今でもとっつきにくかったに違いありません。
また、漫画には難しい単語が出てくることもありますので、この単語はどんな意味?と自分で調べる機会にも繋がります。
不思議なもので、国語の宿題では面倒だなと思っても、漫画の中で出てくるものは率先して調べたりするのですよね。
漫画=悪ではなく、漫画も良い学習ツールになることがありますので、ぜひ上手に活用していただければと思います。
世界で活躍するために、これからの教育のカギとなる「読解力」。
それは本を好きになるところから始まります。
本を好きなるには、乳幼児期にいかに本を読むことに対して
・面白い!
・楽しい!
・嬉しい!
というプラスの感情をいかに持てるか、が重要です。
お子様が将来、AIに負けない、世界中どこでも活躍出来る人になるために、ぜひ今からお子様と絵本を楽しむ時間を積極的につくってみてくださいね。
絵本は大人である貴方にも良い影響を与えてくれる素敵な教材なのですから。
子ども&貴方の可能性は無限大!
Category ”真の”才能を発掘する方法 . 世界の文化 . 専門家コラム . 真のグローバル人の育て方 . 親と子のコミュニケーション 2019.02.15