今回は実際の相談をもとに、性同一性障害、幼児期の性の決定について考えます。
2回目の今日は、実際に子どもに見られた事例をもとに考えていきたいと思います。
目次
「男の子のAくんは3歳の年少さん。
プリンセスやプリキュアが好きで、ハンカチやキーホルダーも女の子のような持ち物が多いです。
また、おままごとではシンデレラの衣装を着てご満悦。
いつもその衣装を着ては、とても嬉しそうに遊んでいます。」
みなさんはこの事例を見て、どのように思いますか?
ただ、自分とは違う”女の子”に憧れているだけなのか?それとも、本当に”女の子になりたい”と思っているのでしょうか?
ここではなんとも言えませんが、子どもには自分の性を認識しているからこそ、違う性に憧れをもつ時期があります。
大人でも、”男っていいな、女っていいな”と感じることがありますよね。
子どもはその思いが、好きなものや行動に出ます。
その時期は、だいたい性を確立する2歳~未就学児くらいまで。
それは、性同一性障害とは違い、ただの憧れ、違う自分に変身したいという思いですので、時期が過ぎれば収まってきます。
その時期を経験することで、より自分の性を確立することに繋がります。
また、多くは3・4歳に見られます。
なぜなら、5・6歳になると、周囲の状況が見えるようになるので、目に見える持ち物などには違う性のものは身に付けないようになったり、”やっぱり自分は男の子、女の子なのだ。こちらの方が好きだ。と自分の性を再確認”するからです。
ですので、幼児期の子どもが生物学的性(体の性別)とは違うものに興味を抱いても、そういう時期もあるのだということを覚えておきましょう。
違う性のものに興味を持ったからといって、必ずしも性同一性障害というわけではないのですから。
その時期は一種の遊びともいえる時期です。
否定するのではなく、子どもの気持ちに共感し、”男のだからダメ、女の子だからダメ”などと、制限することはやめましょう。
なぜなら、子どもの心に大きな傷を残しかねないからです。
それでも、やはり、うちの子は性同一性障害かもしれないと感じたら、医療機関に相談してみるのも一つの手です。
”はっきりさせたい、そのうえで今後の対応を決めたい”という思いもあると思います。
しかし、私が何よりお願いしたいのは、上記でも述べましたが、『否定しない』ということです。
子どもは本気で自分と向き合っています。親から否定されてしまっては、子どもの健やかな成長をも阻害されてしまいます。
実際、親が体の性と一致させようと、子どもの好きなものを制限した結果、子どもが鬱に陥ってしまったケースもあります。
どんなものが好きでも、子どもが健やかに成長してくれる方がずっといいと思いませんか?
子どもの一番の味方・安心できる場所は親御さんのところです。親御さんの前でも自分を偽っていなくてはいけないのは、子どもにとって、とても辛いことだということを、忘れないでください。
様々なことを申しましたが、学校や幼稚園、保育園も性同一性障害を作り出してしまう要因かもしれません。
男の子は青、女の子はピンクなどの目印が決まっている、並ばせるときに性別で分ける、などということがあるからです。
どうしても、男の子、女の子というのは分けて生活する場面が出来てしまいますが、教育機関全体・教師などが、もう少し大らかな目で、”性別”というものを捉える姿勢があってもいいような気がします。
たとえどのような性であろうと、子どもが健やかに成長するよう願い、援助していくことは変わらないのですから。
次回は医学的研究の立場から、診断基準などを考えます。