子どもの教育、費用対効果が一番高い時期はどこだと思いますか?
世間では一般的に、年齢が上がれば上がるほど、つまり、どこの高校や大学に行くのかが重要で、そこに向けて教育費を費やすのが一番効果が高いと考えられていますが・・・
実は0-6歳までの間、つまり「幼児教育」が一番費用対効果が高いという結果が出ているのです。
では、“どんな幼児教育”が、費用対効果が高くなる=子どもの将来にとって活きる教育なのでしょうか。
本日はジェームズ・J・ヘックマン著:『幼児教育の経済学』をもとに、
『どんな幼児教育が(子どもの)将来の経済力に繋がるか?』
をお伝えします。
目次
この本は、著者であるジェームズ・J・ヘックマンが行った、
「アメリカの恵まれない家庭(まずしくて幼稚園などに通うことの出来ない家族)の子どもたちに、就学前教育を施したり、家庭訪問を定期的に実施した結果、どのような子に育つか」
という教育実験をもとに、どのような援助が必要なのか専門家の間で様々な意見をまとめたもの。
要約すると、
『乳幼児期の子どもたちに教育を施すことが、その子の将来の経済力にも繋がる。
だから、乳幼児期にはしっかりと教育をしましょう。』
ということを伝えています。
※林先生の初耳学という番組の中でも以前、
「林先生が認めるイマドキの新人教育」
というコーナーで、
「幼児教育に英語は必要ない」
と下記記事にある、シカゴ大学教授の研究に基づいた教育投資対費用効果の話をやっていたそうです。
参考:「0歳〜6歳の幼児教育は「投資対効果」が1番良いって本当?その理由を徹底解説!」
興味深いところが、どの専門家も
”乳幼児期の適切な教育は必要!だと言っているけれど、それだけではうまく機能しない面がある”
という反対意見(?)を持つ専門家の考えも知ることができるところ。
多角的な視点から、教育について考えることができるのです。
例えば・・・
・確かに乳幼児期の教育的介入は必要だけれど、思春期でも同じように適切な援助をしてあげるべき
・母親への教育も実施すべき
・母親ばかりに負担を負うのが当たり前のようになっている。まずはこの意識を変えるべし
などなど。
幼児教育って、当たり前ですが正解のないもの。
しかし、”子どもが宝”なのはどの国でもどの親にとっても変わらない事実です。
だからこそ、どこからサポートするのか、どのような援助を展開していくのか・・・など、専門家の間でも”どこを見るか(見る角度)”によって違ってくるのです。
サポート体制などについては意見が分かれる専門家の間でも、幼児教育に関しては一致していることがあります。
それは・・・
『乳幼児期の適切な教育とは勉学ではなく、ココロを育てることだ!』
ということ。
「認知能力(学歴、勉学、IQなど)ではなく、非認知能力(忍耐力、協調性、EQ、マナー、礼儀など)が十分に形成されていることが、社会的に成功するためには重要だ。
出典:幼児教育の経済学」
※非認知能力は他にも、計画力や自制力、リーダーシップややる気なども含まれます。
”乳幼児期に十分にココロを育てることは、その子の将来のココロの豊かさだけではなく、お金の豊かさにも繋がる”
ということです。
子どもの将来のために”教育投資をする”
という観点から見ると、
「乳幼児教育に投資をした方が、高い効果が得られる」
というのはもはや間違いない事実です。
といっても、お金をたくさんかけて習い事を沢山させればよい、というものではありません。
乳幼児期に投資をするものは、習い事ではなく、
『ココロの教育』
を施すことや、
『子どもの可能性を潰さない』
方法を親が学ぶことです。
”教育”というとどうしても、
・文字の読み書き
・勉強の成績
・英語を話せる
など、「目に見える技術や結果=教育の成果」だと思ってしまいがち。
ですが、本当に価値のある幼児教育の投資とは、”非認知能力=ココロ”という見えないものへ投資することなのです。
目に見えるものだけを教育の成果だと考えていると、いつの間にか教育虐待になっている、ということもあり得るのです。
教育虐待とは、古荘純一氏と磯崎祐介氏の著書、
『教育虐待・教育ネグレクト』
の中に出てくる言葉。
虐待というと、心理的虐待や身体的虐待などがパッと思い浮かびますが、教育虐待も実はとても身近なものなのです。
よくドラマの中でも教育熱心な親が子どもに知らず知らずのうちに負担をかけているというシーンが描かれることがありますよね。
そして現実にも、そのようなことはよく起こります。
私がインターナショナルスクールで働いていた時にも、教育虐待に近いような方を多々見かけることがありました。
教育虐待が起こる要因としては、多くが下記に分類されます。
パターン1:子どもを愛しているがゆえに、大切に想うがゆえに起きる
パターン2:親の見栄やエゴのために起きる
の2パターンです。
誰もが自分の子どもには、”〇〇な人になって欲しい”という想いがありますよね。
・自分で生活できる能力が身に付くように
・将来立派な人になれるように
・大きくなって困らないように
などなど。
それが”子どものため!”と思うからこそ、親自身も頑張れるのです。
でもその親の頑張りが、子どもを苦しめてしまうこともある。
子どもの将来を考え、良かれと思っていたことが、子どもにとっては”教育虐待”となってしまうのです。
これは前述したように、テレビドラマなどでよく見る、あの光景です。
・うちは代々医者の家系なのに、お前だけ・・・!
・将来はお父様のように立派な○○になるのよ・・・!
・うちは経営者一家なのだから、最低限このレベルになってもらわないと困る・・・!
などなど、実は現実にもこのようなことは起きているのです。
例に出したような、経営者や医者でなくとも、この大学には行ってほしい、この小学校へ行かせたい、インターナショナルスクールに入れたいというのも、親の見栄やエゴになっている場合があります。
あなたのためなのよ!といいながら、子どものステータスが自分のステータスだと感じているのなら要注意。
既に教育虐待になってしまっているかもしれませんよ。
・子どものためにはこれが必要!
・この子はこれが好きだからきっとこの才能があるに違いない!
・その子はこういう性格だから私がしっかりしないと!
・・・愛する子どものため、親は一生懸命です。
そしてその一生懸命な愛情は子どもにも伝わっています。
だからこそ、子どもは親の愛情に応えようと一生懸命です。
たとえそれが、『自分にとって苦しいものであっても。』
親の期待に応えるのです。だって愛されたいから。
子どものためだと親も頑張っているのに、結果的に子どもを苦しめていることになっているのだとしたら・・・
こんなに皮肉なことはありませんよね。
子ども本来の可能性も、もしかしたら見逃しているのかもしれません。
子どもに愛情を注いでいるのになんだか上手くいかない気がする・・・
そんな時は、子どもが苦しんでいないかな?とフッと一歩引いて、客観的に子どもを観るクセをつけてみてください。
そうすると、子どもの色んな姿が見えてきて、教育虐待を回避することができます。
さて、少し脱線していまいましたが、話を戻して幼児教育の費用対効果に関して。
先ほど参考にご紹介した記事(↓)にはこんなことも書かれています。
参考:「0歳〜6歳の幼児教育は「投資対効果」が1番良いって本当?その理由を徹底解説!」
「神戸大学の西村教授らが行った「しつけ」に関する研究です。
この研究では4つの基本的なモラル
(=ウソをついてはいけない、他人に親切にする、ルールを守る、勉強をする)
をしつけの一環として親から教わった人は、それら全てを教わらなかった人と比較すると、
平均年収が86万円高い、という結果が出ています。」
参考:「幼児期に躾られたモラルと、成人後の所得、倫理観の調査」
たった4つの基礎的な非認知能力を教えただけで、収入に86万円もの差がでるなんて、大きな差だと思いませんか?
だからこそ、乳幼児期には目に見えるものではなく、”目に見えない部分”にしっかりと投資をすることが重要なのです。
現代は情報過多の時代。
ちょっとネットで調べれば、天才キッズや3ヶ国語が話せるトリリンガルキッズなどの情報も出てきます。
ご近所でも、”あの子はどこに通っていて何が出来る・・・”という情報がすぐ入ってきます。
しかし、溢れる情報に流されて、一番大切なことを見失わないようにしてください。
一番大切で価値のあることは、『目に見えない部分』にあるのです。
英語が出来るからすごいわけでも、漢字が書けるからすごいわけでも、数字に強いからすごいわけでもありません。
大人になっても”価値がある”と判断される部分は、結局『目に見えない人間力』の部分なのです。
だからこそ、それが一番身に付きやすい(育ちやすい)乳幼児期に、一番投資をすることが、子どもの将来の可能性、世界での活躍に繋がるのです。
子ども&あなたの可能性は無限大!
Category 専門家コラム . 発達 . 真のグローバル人の育て方 . 絵本・書籍紹介 2019.03.11