さて、先日から2回にわたって子どもの性同一性障害について考えてきました。
3回目の今回は、医学的研究の立場から考えていきたいと思います。
目次
これはどのようなことかというと・・・
「子どもの時(幼稚園や小学校低学年など)に性同一性障害と診断されても、大人になって性適合手術を望むものは少ない」
ということのようです。
子どもの時に診断されたからといっても、そのままずっと強い性別への違和感を持ち続けているわけではないということですね。
「イギリスのグリーンによる研究では、4歳から12歳(平均9歳)の男児の性同一性障害44名を追跡調査(追跡調査時の平均年齢19歳)しました。
すると、その中で、性別適合手術を真剣に考えていたのはたったの1名だったそうです。
ただ、性的空想においては、33名(75%)に同性愛ないしはバイセクシュアルの傾向が認められたようです。
またズッカーの追跡調査によれば、思春期前の45人の性同一性障害者の中で、14%が思春期になっても性転換を希望しました。
コーヘン・ケティニスの報告では、初診時に12歳前だった129人の小児の中で、74人がすでに12歳を超えていて、その74人中、17人が強い性別違和を持ち性別適合手術を望んでいるとのことです(女性8人、男性9人)。」
※子どもの性同一性障害を考えるより抜粋。
つまり、「幼稚園や小学校低学年で性同一性障害と診断されても、大人になって性別適合手術を望むものは少ない。ただ、中学校に入って性同一性障害と診断されるものはそのまま性別適合手術を望むものは増えてくる」ということのようです。
先日も述べたように、幼児期には異性への興味・自分とは違うものへの興味が湧く時期ですから、その時期が強いと、もしかしたらそのように診断されてしまうのかもしれませんね。
これらのことを考えると、『子どもの性同一性障害が、必ずしも継続して大人の性同一性障害に繋がるわけではない』ということがいえるのではないでしょうか?
では、子どもの診断基準とはどのようなものなのでしょうか?
以下、アメリカ精神医学会の作成したDSM-IV-TRの診断基準より抜粋です。
●子どもの場合、その障害は以下の4つ(またはそれ以上)によって表れる。
1)反対の性になりたいという欲求、または自分の性が反対であるという主張を繰り返し述べる。
2)男の子の場合、女の子の服を着るのを好む、または女装を真似ることを好むこと。
女の子の場合、定型的な男性の服装のみを身につけたいと主張すること。
3)ごっこあそびで、反対の性の役割をとりたいという気持ちが強く持続すること、または反対の性であるという空想を続けること。
4)反対の性の典型的なゲームや娯楽に加わりたいという強い欲求。
5)反対の性の遊び仲間になるのを強く好む。
●子どもの場合、障害は以下のどれかの形で現れる。
・男の子の場合、自分の陰茎または睾丸は気持ち悪い、またはそれがなくなるだろうと主張する、または陰茎を持っていない方が良かった と主張する、または乱暴で荒々しい遊びを嫌悪し、男の子に典型的な玩具、ゲーム、活動を拒否する。
・女の子の場合、座って排尿するのを拒絶し、陰茎をもっている、または出てくると主張する、または乳房が膨らんだり、または月経が始まって欲しくないと主張する、または、普通の女性の服装を強く嫌悪する。
・その障害は、身体的に半陰陽を伴ったものではない。
・その障害は、臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
このように診断基準はありますが、実際には子どもへの診断は難しいものがあるようです。(アスペルガー症候群などの発達障害との鑑別)
今回、子どもの時に診断されたからといって、大人になってからもずっと続くわけではないことを示しました。
けれど、だからといって、一時のこと、気の迷いだと考えて、体の性別らしさを要求するのはいただけません。
やはり、その子の思いを受け取め・認めることを忘れずにいてあげて下さいね。
次回はいよいよ最終回。
本人ではなく、周りの兄弟の思いや海外の事例などをご紹介します。