さて、今日は昨日の続き。(→「日本と似ている国、ドイツのお父さんの育児参加を考える。」)
育児に対してかつて日本と同じような考えを持っていたドイツの家族政策から、「父親がいかに気持ちよく育児に参加できるようになるか」ということを紐解いてみたいと思います。
前回の記事で、家族政策の方針が”子育ては母親が行うべきもの”から、”共働きを前提に家族を支援する”ものに変わったとお伝えしました。
これで父親も育児に参加しやすくなったかと思いきや・・・今度は賃金の問題に直面します。
目次
日本と同様、男女間の所得格差があり、EU27カ国中で4番目に格差が大きいというデータもあるドイツ。
その中で、8割以上の父親が、育児休業が難しい理由として、「父親が育休を取得する場合、母親が育休を取得するよりも所得の減少が大きい」ことを挙げています。
また、休業中のキャリアクロスへの不安も特に強いことから、育児休暇の取得をしないという理由に繋がっていました。
確かに、育児休業って1年や2年など、長期に渡るイメージがありますよね。『一家の大黒柱』としては、”そんなに休んでいられない!”という心境だと思います。
それらの問題を解決するのに一番の支援は・・・『給付制度』
フィンランドと同じように、育児休暇中でも、きちんと給付という形で家庭を支援していくことが大切なのですね。
実際ドイツでも、新しく”「両親手当」制度”として、休業前の賃金の67%、月に最大で1800ユーロが支給されるようにしたところ・・・
制度導入前に取得された両親休暇のうち、わずか3.5%しかなかった父親による育児休暇申請が、導入後は18.6%まで急拡大したのです!
(※両親手当とは・・・両親が合計で最大14カ月受給できる。しかし、一方の親が需給できるのは12カ月が上限。両親ともに(父親・母親の両方が)取得しない場合は2カ月分の受給資格が消滅する。つまり、父親の育児休暇の取得を明確に意識した制度になっている。)
これらの給付はスウェーデンの80%には及びませんが、67%まで引き上げられたことで、負担感はかなり軽減されているといえます。
また、日本では育児休業基本給付金の支給要件として、月に20日以上休業していなければなりませんが、ドイツでは週に30時間以内の労働をする場合でも、短時間勤務によって減少した所得のうちの67%が両親手当として支給されるようになっています。
この制度であれば、完全に休業した場合より家計への打撃が小さくなり、完全休業する場合に比べて、キャリアの心配も小さくなるでしょう。
実際、育児休業を取得した男性の29%がパートタイム就労を行いながら手当を受給しているようです。
これらのことを考えると、父親の育児休暇取得のためにはただ給付をするだけではなく、
・給付による所得の保障
・短時間勤務などによるキャリアへの配慮
が必要なのですね。確かに、日本では母親が「時短」で働くことは多いかもしれませんが、父親が「時短」で働くということは少ないような気がします。
さて、「両親手当て」や「時短勤務」などで父親の育児休暇取得率を伸ばしたドイツ。
具体的には、どのくらいの期間を”育児休暇”にあてる父親が多いのでしょうか?
それは・・・『2か月以内』が一般的なようです。
「両親手当て」の影響もあるかもしれませんね。短い!と思われる方もいるかと思いますが、実は父親の育休取得率の高いスウェーデンでも、父親の取得は2か月以内が大半なのです。
たった2か月間とはいえ、育児に責任を持って主体的に関わることで、育児の精神的・身体的負担についての理解が深まり、育児スキルも高まります。
育児の大変さを身を持って実感することで、父親が継続的・積極的に育児に関わり、母親の負担を軽減することにも繋がるのです。
”共働きは当たり前”になりつつある現代の日本。
フィンランドの回でもお伝えしましたが、母親はもちろん、父親も当たり前のように育児休暇を取得して、育児を楽しめる社会にしていかなければ、少子化は進む一方だと思います。
また、「育児に参加したい!」と思う父親も増えています。母親だけではなく、こんな思いを持つ父親の気持ちに応えることのできる社会になるようにしていきたいですね。
Category 世界の文化 . 専門家コラム . 親と子のコミュニケーション 2015.06.12